家庭菜園をしていると、作物の葉にびっしりと黒や緑の小さな虫がついていることはありませんか?それはアブラムシの可能性が高いです。アブラムシは放置すると作物の成長に悪影響を与え、葉が縮れてしまったり、最悪の場合は枯れてしまうこともあります。さらにウイルス病を媒介することもあるため、一度発生すると被害が広がりやすい厄介な害虫です。
この記事では、アブラムシの生態や発生原因を詳しく解説し、無農薬での駆除・予防法についても紹介します。早めの対策を取り、家庭菜園への被害を最小限に抑えましょう。
作物の葉に黒や緑の小さな虫がびっしり!アブラムシの大量発生に注意
アブラムシの生態、特徴

アブラムシは体長1〜4mmほどの小さな虫で、カメムシ目に属する昆虫の仲間です。緑色や黒色、黄色など種類によって色が異なります。植物の汁を吸って栄養を奪い、繁殖力が非常に高いのが特徴です。特に春から秋にかけて大量発生し、湿度が高く温暖な気候を好みます。
アブラムシは単独で行動することは少なく、群れを作って生活します。気温が高いと一週間程度で成虫になり、短期間で数世代にわたって増殖するため、あっという間に作物を覆ってしまうことがあります。また、雌だけで無性生殖を行うことも可能なため、オスがいなくても増え続けるのが特徴です。
さらに、アブラムシには有翅型と無翅型が存在します。有翅型は風に乗って移動し、新たな作物に寄生します。一方、無翅型は定住して植物の汁を吸い続けます。環境が悪化すると有翅型が増え、新たな寄生先を探しに飛んでいくため、一度アブラムシが発生すると拡散しやすいのです。
どんな野菜が被害に遭いやすい?

アブラムシは多くの野菜に被害を与える害虫ですが、特に以下のような作物に付きやすいです。
- キャベツ、ブロッコリーなどのアブラナ科
- トマト、ナス、ピーマンなどのナス科
- キュウリ、スイカ、メロンなどのウリ科
- ほうれん草、レタスなどの葉物野菜
- イチゴ
アブラムシ被害の出る植物は多く、予防が非常に重要です。被害に遭いやすい作物を知り、発生初期の段階で対策を講じるようにしましょう。
アブラムシが付きにくい作物

アブラムシは多くの作物に被害を与えますが、比較的付きにくい作物もあります。家庭菜園では、以下の作物を取り入れることでアブラムシの被害を軽減できます。
- ネギ、ニラ、ニンニクなど:強い香りがアブラムシを寄せ付けにくくします。
- ミント、バジル、ローズマリーなどのハーブ類:香り成分がアブラムシを遠ざけるため、防虫効果があります。
これらの作物を家庭菜園に取り入れることで、アブラムシの被害をある程度抑えることができます。
防虫ネットでも完全には防げない…どこからやってきている?

防虫ネットを使用していてもアブラムシが発生することがあります。その主な原因は以下のとおりです。
- 風に乗って飛来する:アブラムシの有翅型は風に乗って移動するため、隙間があると簡単に侵入します。
- 網目から侵入する:アブラムシは非常に小さく、防虫ネットの網目からも侵入してしまうことがあります。できるだけ目の細かいネットを選ぶようにしましょう。
- 苗や土に付着して持ち込まれる:購入した苗にすでにアブラムシが付いていることがあります。また、土の中に卵が潜んでいることもあり要注意です。
- アリが運んでくる:アブラムシとアリは共生関係にあり、アリがアブラムシを守りながら移動させてくることがあります。
これらの侵入経路を意識し、こまめにチェックすることが大切です。
アブラムシとアリの関係

アブラムシが発生すると、近くにアリも一緒に見かけるようになります。その理由は、アブラムシが「甘露」と呼ばれる糖分を多く含んだ排泄物を出すためです。この甘露はアリの大好物であり、アリはアブラムシを守る代わりに甘露をもらう関係にあります。
アリがアブラムシを他の場所へ運ぶこともあるため、アブラムシだけでなくアリの対策も同時に行う必要があります。また、作物の苗にアリがたかっていたら、必ずといっていいほどアブラムシが発生しているためかならずチェックするようにしましょう。
天敵はいる?アブラムシを食べる虫がいるって本当?

アブラムシには自然の天敵が存在します。これらの天敵をうまく活用することで、農薬を使わずにアブラムシの被害を抑えることができます。
- テントウムシ(幼虫・成虫とも):1匹で1日に100匹以上のアブラムシを食べることもあります。
- カマキリ:幼虫の時にアブラムシを捕食します。
- クサカゲロウの幼虫:アブラムシを好んで捕食します。
これらの天敵を見かけたら畑から駆除せずにおくと、アブラムシの繁殖抑制に効果的です。ただし天敵だけでアブラムシをすべて駆除するのは難しく、他の方法を併用して対策するのがおすすめです。
無農薬のアブラムシの防除対策と駆除法は?
簡単で即効性の駆除法は油石けん水
油石けん水はアブラムシの体表を覆い、呼吸を妨げて駆除する方法です。
アブラムシは気門とよばれる穴から呼吸を行っており、この穴がふさがれると窒息してしまいます。油石けん水で気門をふさぐことでアブラムシを窒息させ、物理的に駆除することができます。
作り方:
- 植物油(食用油)小さじ1
- 台所用中性洗剤小さじ1
- 水500ml
これをスプレーボトルに入れで混ぜ、アブラムシに直接噴霧します。アブラムシの体全体が覆われるように、しっかり吹き付けるのがポイントです。
窒息したアブラムシは作物に付いたままになるため、数時間後に流水で洗い流しましょう。
アブラムシは短期間で増殖して大量発生することが多く、駆除するには広範囲にスプレーしなければならないことも多いです。蓄圧式のスプレーボトルを使うと非常に効率的ですので、是非ためしてみてください。
流水で洗い流す
アブラムシが作物にしがみつく力はそれほど強くないため、ホースの水で勢いよく葉の裏を洗い流すだけでも、大量のアブラムシを除去できます。大量発生してしまい、対策が難しい際には試してみてください。
水流が強すぎると作物や葉を傷めてしまうため、強さを調節しながら行うようにしましょう。
木酢液を活用
木酢液は、炭焼きの際に発生する煙から得られる液体で、無農薬での防虫剤として広く利用されています。500倍程度に薄めた木酢液をスプレーすると、アブラムシの寄り付きが減ります。
- 木酢液を水で希釈(通常は500倍程度)して、スプレーボトルに入れます。
- 被害のある葉や茎にスプレーします。特に葉の裏側を重点的に散布すると効果的です。
- 週一回程度、定期的に散布するようにしましょう。
コーヒーを活用
コーヒーを100倍程度に薄めてスプレーすると、カフェインの効果でアブラムシを駆除できます。
牛乳はアブラムシの駆除に使える?
牛乳はアブラムシの駆除に使えます。牛乳を原液のままアブラムシにスプレーすると、乾燥して膜を作り、アブラムシの呼吸を妨げて窒息死させる効果があります。
ただし、乾燥後は悪臭が発生しやすく、カビの原因にもなるため、数時間後に水で洗い流すのがポイントです。
牛乳スプレーは無農薬で手軽にできる方法ですが、効果はそれほど大きくないため、大量発生時には他の対策と併用するのが効果的です。
発生を防ぐための土作りと環境整備
アブラムシは1度発生すると短期間で爆発的に繁殖するため、駆除のしかた以上に予防が重要になります。アブラムシの発生を抑えるには、作物にとって健康な生育環境を整えてあげることが大切です。
- 有機質を多く含んだ土作り:堆肥や腐葉土を混ぜ、土の栄養バランスを整える。
- 過剰な施肥を避ける:窒素肥料が多すぎるとアブラムシが好む柔らかい葉が増えるため、適量を守る。
- 風通しを良くする:密植を避け、間引きを行うことでアブラムシが付きにくい環境を作る。
- 雑草をこまめに除去する:雑草にはアブラムシが隠れていることがあり、繁殖の温床になる。
被害を最小限にするための早期発見ポイント
アブラムシの被害を最小限に抑えるためには、早期発見が重要です。被害が広がる前に発見するポイントを紹介します。
- 葉の裏をチェック:アブラムシは葉の裏に集まることが多いため、定期的に確認する。
- 新芽や茎の付け根を見る:特に柔らかい新芽や茎の付け根に付きやすい。
- アリの行動を観察する:アリが作物を頻繁に登っている場合、アブラムシが発生している可能性が高いため確認する。
- 黄色い粘着シートを設置する:アブラムシが好む黄色に誘引されるため、早期発見の手助けになる。
これらのポイントに注意しながら、繁殖する前に早期駆除を心がけましょう。特に、アリが作物の周辺を頻繁にうろついている時は高確率でアブラムシが発生しています。必ずチェックするようにしましょう。
土の中の卵を駆除する方法
アブラムシの中には、秋から冬にかけて土の中や植物の根元に卵を産みつける種類もいます。
卵が春になって孵化し、新たなアブラムシの発生源となるため、土壌管理が重要です。土の中の卵を駆除する方法をご紹介します。
- 天地返し、寒起こしを行う
冬の間に土を深く耕すことで、アブラムシの卵を地表にさらし、寒さや天敵にさらすことができます。特に寒冷地では露出した卵が低温で死滅するため、効果的です。 - 太陽熱消毒をする
夏場にビニールシートで畝を覆い、土の温度を上昇させる「太陽熱消毒」を行うことで、卵や幼虫を死滅させることができます。夏野菜の収穫が終わった場所で取り入れるのがおすすめです。 - 水はけを良くする
アブラムシは湿度の高い環境を好むため、排水性の良い土壌を作ることで、アブラムシの卵が定着しにくくなります。腐葉土や堆肥を適度に混ぜ、通気性の良い土を作りましょう。 - 天敵の住みやすい環境を整える
土壌中に生息する有益な微生物や、アブラムシの卵を捕食する天敵(クモやテントウムシの幼虫など)を増やすことで、自然な駆除が可能です。
まとめ
1. アブラムシとは?
- 黒や緑の小さな虫で、作物の汁を吸って栄養を奪う。
- 繁殖力が非常に高く、放置すると作物が枯れることもある。
- ウイルス病を媒介する厄介な害虫。
2. アブラムシの生態と特徴
- 体長1〜4mm、緑・黒・黄色などの種類がある。
- 無性生殖が可能で、短期間で爆発的に増殖する。
- 有翅型(飛ぶ)と無翅型(定住)が存在する。
3. 被害を受けやすい作物
- アブラナ科(キャベツ、ブロッコリー)
- ナス科(トマト、ナス、ピーマン)
- ウリ科(キュウリ、スイカ、メロン)
- 葉物野菜(ほうれん草、レタス)
- イチゴ
4. アブラムシが付きにくい作物
- 強い香りの作物(ネギ、ニラ、ニンニク)
- ハーブ類(ミント、バジル、ローズマリー)
5. 防虫ネットでも防げない理由
- 風に乗って飛来する。
- 網目から侵入することがある。
- 苗や土に付着して持ち込まれる。
- アリがアブラムシを運ぶ。
6. アリとの関係
- アブラムシの「甘露」を求めてアリが集まる。
- アリがアブラムシを保護し、他の場所へ運ぶこともある。
7. アブラムシの天敵
- テントウムシ(成虫・幼虫ともに捕食)
- カマキリ(幼虫が捕食)
- クサカゲロウの幼虫(アブラムシを好んで捕食)
8. 無農薬の駆除方法
- 油石けん水スプレー(アブラムシを窒息させる)
- 食用油 小さじ1 + 中性洗剤 小さじ1 + 水500ml
- 流水で洗い流す(ホースの水で勢いよく流す)
- 木酢液スプレー(500倍希釈)
- コーヒースプレー(100倍希釈)
- 牛乳スプレー(乾燥させて窒息させるが悪臭に注意)
9. 発生を防ぐ環境作り
- 有機質の多い土作り(堆肥・腐葉土を活用)。
- 窒素肥料を控えめに(柔らかい葉を減らす)。
- 風通しを良くする(間引きを行う)。
- 雑草をこまめに除去(隠れ家を減らす)。
10. 早期発見のポイント
- 葉の裏、新芽、茎の付け根をこまめにチェック。
- アリの行動を観察(アブラムシの発生サイン)。
- 黄色い粘着シートを活用(誘引効果あり)。
11. 土中のアブラムシの卵対策
- 天敵を増やす環境を整える(テントウムシなどの活動を促す)。
- 天地返し・寒起こし(冬に耕して卵を寒さにさらす)。
- 太陽熱消毒(夏場にビニールシートで加熱)。
- 水はけを良くする(通気性の良い土作り)。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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