「葉の表面に白い粉がついてる…?」「下葉から黄色く枯れてきた…」
家庭菜園でこんな症状に心当たりはありませんか?もしかするとそれ、「うどんこ病」のサインかもしれません。
うどんこ病は、葉の表面が白く粉をふいたようになる、家庭菜園でも非常によく見られるカビ由来の病気です。特にキュウリ・ズッキーニ・スイカなどのウリ科野菜では発生しやすく、一度広がるとあっという間に畑全体に被害が及ぶことも。
本記事では、うどんこ病の発症メカニズム・発生しやすい時期と条件・見分け方・放置した場合の影響まで詳しく解説し、重曹や木酢液など自然由来の資材でできる無農薬対策についてもご紹介します。
うどんこ病の原因と発症メカニズム

うどんこ病はカビ(糸状菌)が原因の病害です。原因菌はウドンコカビ科に属するカビの総称で、症状がまるでうどん粉を振りかけたように見えるため「うどんこ病」と名付けられました。
うどんこ病菌には多数の種類があり、宿主となる植物ごとに異なる菌が寄生するため、その種類は1科16属で約900種にも及ぶと言われます。植物によって病原菌の種類が異なるため、うどんこ病が異なる種類の植物に直接うつることはありません。
なお、うどんこ病菌は生きた植物にしか寄生できない絶対寄生菌で、枯れた組織では生きられません。しかし、秋に落ち葉の裏などで菌が越冬し、春の新芽に感染源となる場合もあるため、シーズン後には病葉をきちんと処分することが大切です。
病原菌が植物に付着すると菌糸を伸ばして表面に定着し、植物の栄養を吸い取って繁殖します。胞子は風で飛散して周囲の植物へ広がり、新たな感染源となります。
密植されて風通しの悪い状態や、窒素過多の施肥による軟弱な生育がうどんこ病の発生リスクを高める要因です。また、一度発病すると胞子が大量に発生しやすくなり、放置すれば翌年以降も被害が出やすくなるため、早期発見・対処が重要です。
発生しやすい時期と気象条件
本州の気候において、うどんこ病は春から秋(おおよそ4月~10月)にかけて発生しやすい病気です。特に朝晩が冷え込み湿度が高く、日中は乾燥する春先や秋によく見られます。朝夕の寒暖差が大きい5~6月頃や9~10月頃に発生が多くなります。
一方で高温多湿の環境では発生しにくい性質があり、梅雨時期(6~7月の長雨期)や真夏の猛暑期(7月下旬~8月)にはうどんこ病はあまり見られません。うどんこ病菌は水濡れや高温に弱く、空気が乾燥した環境を好むため、梅雨や真夏を除く時期に流行しやすいのです。
また、ハウス栽培の場合は年間を通して条件が揃えば発生し続けてしまうこともあり得ます。家庭菜園では梅雨明け直後~秋口に注意しつつ、冷涼で乾燥気味の環境になりやすい時期は特に警戒しましょう。
うどんこ病にかかりやすい植物
うどんこ病は非常に多くの植物に発生するため、家庭菜園やガーデニングを楽しむ人にとっては非常に厄介な病気です。
最も被害が出やすいのはウリ科の野菜(キュウリ、ズッキーニ、カボチャ、スイカ、メロンなど)で、家庭菜園で問題になるのはほとんどがこれらを栽培しているときでしょう。
その他にも果菜類、草花・花木類、一部の庭木、果樹・果物類にも発生することがあり、非常に多くの植物がうどんこ病の宿主になりえます。したがってウリ科以外でも、例えばバラの葉が白くなるといった症状を見かけたら、それもうどんこ病を疑う必要があります。
イネ科など単子葉植物やマツ・イチョウなど裸子植物には発生しにくいとも言われています。トウモロコシや洋芝などでは基本的に報告がありません。ただし一部の穀類ではうどんこ病が発生する例もあり、植物の種類ごとに原因菌が異なるため、油断せず観察を続けることが大切です。
うどんこ病の症状
初期症状
うどんこ病に感染すると、まず葉の表面に白い粉状の小さな斑点が現れます。これはカビの胞子と菌糸が集まったもので、指で触ると白い粉が付着するのが特徴です。
初期には点状でも、次第にその斑点が数を増し大きく広がって葉を覆うようになり、一見すると葉全体が白カビで粉を吹いたような状態になります。
やがて症状が茎や葉裏、つぼみ、果実など植物全体に及ぶこともあり、そうなると光合成障害により生長不良に陥ります。
進行症状
症状が進行すると、葉や茎がねじれたり縮れたりといった生育異常も発生します。うどんこ病菌が栄養を吸い取ることで葉肉が傷み、葉脈が変形してしまうためです。
そのまま重症化すると、葉は次第に黄色く変色して枯れてしまいます。特に下葉から感染する場合が多く、下位の古い葉から順に黄変して早期落葉を招きます。
果実自体にカビが生えることもありますが、果実は葉より硬いため白い斑点程度でとどまることが多いです。しかし葉が枯れると養分が回らず実の肥大不良や味の低下を引き起こす可能性があります。
また、感染部位に黒い小さな斑点が現れることがあります。これは病原菌が後期に形成する構造で、越冬源にもなり得ます。こうした黒点が見られた葉は特にしっかり除去すべきです。
いずれにせよ、白い粉斑が葉に出始める初期段階で発見することが肝心で、広がってからでは防除が難しくなるため、日頃から葉裏も含め植物を観察しましょう。
放置した場合の収穫量や株への影響
うどんこ病を放置すると、植物体へのダメージが次第に大きくなります。葉の表面がカビに覆われると光合成が妨げられ、植物は十分なエネルギーを作れなくなります。
その結果、生長が著しく遅れたり、果実の発育が悪くなったりします。特に野菜の場合、収穫量の大幅な減少や品質の低下は避けられません。収穫できる期間も短くなり、家庭菜園の楽しみが半減してしまうでしょう。
病害が進んで葉が枯死すると株全体の樹勢が弱ります。バラや果樹など多年生の植物では、その年の生育不良だけでなく翌年以降も株が弱体化し、さらに病気にかかりやすくなる悪循環に陥りかねません。
さらに、うどんこ病菌は大量の胞子を飛散させるため、放置すると近隣の健全な株にも次々と感染が広がる恐れがあります。見つけ次第すぐに対処することが肝要です。
最終的に株が枯死することもあるため、大切に育てている野菜や花を守るためにも決して放置しないでください。また、一度大量発生した胞子はその場に残存し翌シーズンの感染源にもなります。放置すればするほど次の栽培にも悪影響を及ぼすため、早め早めの対策が結果的に手間を減らすことにつながります。
うどん粉病が発生した場合の対処法
うどんこ病が発生してしまった場合でも、適切に対処すれば被害拡大を最小限に抑えることができます。
感染部位の早期除去
まず発見したらすぐに病斑の出た葉や枝を切り取りましょう。ハサミで葉を付け根から切除し、株から取り除きます。
切り取った葉はその場に放置せずビニール袋に密閉してゴミとして処分するか、燃やせる環境であれば焼却します。絶対に庭先や畑に捨てないでください。放置した落ち葉から再び胞子が飛び、周囲に二次感染してしまうためです。
作業後はハサミ等の器具もアルコールや次亜塩素酸水で消毒し、胞子の付着を落としておくと安心です。
軽症なら自然防除策を再度実施
取り除いた後、まだ初期的な広がりであれば後述の重曹水・酢・木酢液などを使って周囲の葉にスプレーし、残存する目に見えない胞子の発芽を抑えます。週1回程度、雨に流されたらその都度こまめに散布してください。
病葉を除去することで日当たり風通しが改善される効果も期待できます。併せて株元の雑草を取り除き、土に潜む胞子や寄主植物(雑草)を減らすことも有効です。マルチや敷きわらをしている場合は、その上に落ちた白い葉のカスなども掃除しておきましょう。
広範囲・重症の場合は薬剤も検討
自然由来の対策だけでは追いつかないほど広範囲にうどんこ病が蔓延している場合や、貴重な作物で絶対に被害を止めたい場合は、市販の殺菌剤(農薬)の力を借りる選択肢もあります。
うどんこ病に効果のある登録農薬はいくつもありますので、使用にあたっては作物毎の登録農薬から選び、希釈倍率や使用回数などラベルの指示を守って散布しましょう。
環境の見直しで再発防止を
発病後の対処と並行して、なぜ発生したか環境を振り返り改善することも大切です。
密生していたなら間引きや剪定で風通しを改善し、肥料過多だったなら次回から控えめにする、日当たりが悪かったなら鉢植えなら場所を移動、畑なら来年はその場所に日照を確保するといった具合です。
連作も避けた方が良い場合があります。同じウリ科野菜を毎年同じプランターや畝で育てていると、周辺にそのうどんこ病菌が定着しやすくなります。ウリ科→非ウリ科と交互に育てる輪作をしたり、プランター培土を更新したりするのも再発防止に有効です。
またシーズン終了後には枯れ葉や株を早めに撤去し、畑であれば地表の病葉をすき込まずに集めて処分してください。冬の間にしっかり片付けておけば、春先の新芽への感染源を減らせます。
無農薬・自然由来資材による予防方法
農薬を使わずにうどんこ病を予防・軽減する方法も数多く知られています。複数を組み合わせることで予防効果が高まるためいくつか併用して対策を行いましょう。
風通しと日当たりの確保
資材を使った対策ではありませんが、最も重要なのは風通しと日当たりの確保です。
株間を広く取り、込み合った枝葉を剪定して風通しを良くしましょう。日照も大事で、日陰が多いと湿気がこもり病気が発生しやすくなります。
プランター栽培の場合は設置場所を見直し、できるだけ日当たりと風通しの良い環境で育てます。また支柱立てや誘引できゅうり等のツルを地面から持ち上げることも有効です。
適切な水やりと肥料管理
過乾燥や過湿にならないよう土壌の水はけ・保水に配慮し、極端な水切れや水のやりすぎを避けます。特にキュウリは浅根で乾燥に弱いため、敷きわら等で土の乾燥を防ぐのも有効です。
一方で葉面は適度に濡らす工夫も有効です。うどんこ病菌は水に弱い性質があるため、真夏の晴天時にはジョウロやホースで葉裏まで水をかけることで予防効果が期待できます。
夕方以降や気温の低い時に葉を濡らすと別の病気を誘発するので、葉水は日中の高温時に行うのがポイントです。
肥料については窒素のやりすぎに注意します。窒素過多だと軟弱な新葉が茂ってかえって発病しやすくなるため、リン酸・カリなどバランスの良い施肥を心がけ、緩効性肥料を適量施すようにしましょう。
重曹スプレー
食品にも使われる重曹(炭酸水素ナトリウム)はアルカリ性のため、カビの繁殖を抑える効果があります。家庭菜園では手軽な天然の抗菌剤として利用できます。
水500mlに対し重曹1g程度を溶かし、スプレーボトルで葉の両面に満遍なく噴霧します。週に1回程度の定期散布で予防効果が期待でき、初期症状であれば治療的にも作用します。濃度を濃くしすぎると葉焼けの恐れがあるため注意しましょう。
酢酸スプレー
台所にある食酢(酢酸)も菌の繁殖を抑える方法として知られています。食酢を少量(水350mlに酢3ml程度)に薄め、重曹水と同様に葉にスプレーします。
酢独特の匂いはありますが、濃度を間違えなければ植物への害はほとんどなく使用できます。重曹と酢はアルカリ性・酸性で逆の性質ですが、どちらもうどんこ病の初期段階であれば効果が出る場合があります。発生を見つけたらまず身近な重曹や酢で試してみるのも良いでしょう。
木酢液スプレー
木酢液は木材や竹を炭焼きする際に出る煙の液で、殺菌・防菌効果が期待できる自然資材です。
市販の園芸用木酢液をラベル記載の希釈倍率で薄め、同じく葉や茎にスプレーします。木酢液には数百種類の有機成分が含まれ、うどんこ病など病害抑制に役立つとされています。
独特の燻製臭がありますが、無害で有機栽培派に人気の方法です。なお竹から作られる竹酢液も同様に使えます。
米ぬかの活用
米ぬかには豊富な栄養分と善玉菌(乳酸菌や放線菌など)が含まれており、土壌に撒くことで土中微生物のバランスを整えて病原菌の増殖を抑える効果が期待できます。
植物の根元や畝間に米ぬかを薄く撒き、軽く土と混ぜ込むことで土壌環境を改良し病気に強い土作り、発病予防目的で使用するのがおすすめ。使う米ぬかはカビの胞子を持ち込まないよう注意しましょう。
コンパニオンプランツの利用
植物同士の相性を利用して病害虫を防ぐのをコンパニオンプランツ呼び、うどんこ病対策にも応用できます。
有名なのがオオムギとウリ科野菜の混植です。例えばカボチャを植える畝の通路部分にオオムギを先に播き、発芽後にカボチャを定植します。
生育過程でオオムギは初夏にかけてひ弱になりうどんこ病にかかりますが、実はそのうどんこ病菌にはうどんこ病菌を食べる有用菌が寄生し始めます。この有用菌はあらゆる種類のうどんこ病菌に寄生するため、結果的にカボチャのうどんこ病も抑制される、という生物的防除の仕組みです。
オオムギは真夏の暑さで自然枯死しますが、枯れた茎葉は畝のマルチ代わりとなり土の乾燥も防いでくれるため、一石二鳥の効果が期待できる方法です。
早期発見、対策が最も重要
以上のような対策は発生予防や初期対応として有効ですが、進行状況や周囲の環境により効果はまちまちです。散布のタイミングや濃度調整、環境要因によって効き目に差が出るため、根気よく試すことが大事です。
特に重曹や酢、木酢液は初期段階なら治ることもあるとされていますが、進行してしまった場合は茎はの除去や、株ごと抜いてしまうことが唯一の対策となることも珍しくありません。
被害が進行して手遅れになる前に、早期発見、早期対応を心がけましょう。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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