いつの間にか庭木に小さな穴があき、徐々に枯れてきている。こんな症状で原因が分からず困っていませんか?もしかすると、カミキリムシによる害虫被害かもしれません。
一見すると美しい模様のある甲虫ですが、幼虫は木の内部に潜り込み、知らぬ間に幹を食い荒らしてしまう静かな脅威です。特に柑橘類やカエデをはじめとする庭木・果樹に甚大な被害をもたらすことで知られています。
本記事ではカミキリムシの種類と生態から、成虫・幼虫それぞれによる被害の見分け方、さらに無農薬の手法を中心とした予防と駆除の方法、被害発生後の回復手段までを徹底解説していきます。
カミキリムシの種類、生態
庭木や果樹を食害する代表的なカミキリムシには、ゴマダラカミキリ(ホシベニカミキリ)やキボシカミキリなどがいます。ゴマダラカミキリは黒地に白や黄色の斑点模様を持つ日本固有種で、柑橘類やイチジク、サクラ、リンゴ、カエデ類、サルスベリなど幅広い樹木を加害します。
主な発生サイクルは年1世代で、成虫は初夏(5月~7月頃)に発生し、メスが6~7月を中心に幹の根元近くに産卵します。卵は約1週間で孵化し、幼虫(テッポウムシとも呼ばれる)が木の内部に侵入して食害を開始します。
幼虫期間は長く、木質部の中で約1~2年かけて成長し、被害木内部を食い荒らした後、翌年の初夏(5~6月頃)に成虫となって直径1cmほどの丸い脱出孔を開けて羽化します。一匹のメス成虫は数十~数百個もの卵を産むとも言われ、放置すると翌年以降に大量発生する恐れがあります。
一方、キボシカミキリ(黄色い斑点があるやや小型のカミキリムシ)はゴマダラカミキリより体が細く、小柄です。活動時期は5月から11月頃と長く、桑やイチジク、ミカンなどを好んで産卵・加害します。地域によっては年2世代が発生する場合もあり、成虫の活動期間が長い点に注意が必要です。
また、日本には他にもシロスジカミキリやクビアカツヤカミキリなど多くのカミキリムシが存在しますが、一般家庭の果樹や庭木で問題になるのは主にゴマダラカミキリやキボシカミキリです。これらの幼虫は総称してテッポウムシと呼ばれることもあり、樹木内部を食害する厄介な害虫です。発生時期は地域や気候によって多少前後しますが、6~8月にかけて被害が集中しやすいので、この時期は特に注意しましょう。
カミキリムシカミキリムシ被害の見分け方
カミキリムシによる被害は、成虫と幼虫の段階で現れる症状が異なります。成虫は樹木の外側に現れて樹皮や若枝をかじるほか、産卵の際に幹に傷をつけます。一方、幼虫は木の内部に潜り込んで幹や枝を内部から食害するため、被害が深刻化しやすく発見も遅れがちです。それぞれの被害症状と見分け方を解説します。
成虫の被害の特徴と見分け方:枝や幹の食害跡に注意

成虫のカミキリムシは6~7月頃に活発に活動し、樹木の表面で交尾・産卵します。産卵時、メス成虫は幹の根元近くの樹皮を強力な顎でかじって傷を付け、その傷口に1個ずつ卵を産み付けます。この産卵痕は小さな楕円形のかじり跡として残り、樹皮が削り取られたように見えるのが特徴です。
また、成虫は産卵だけでなく細い枝や新梢の樹皮もかじって食害します。特にゴマダラカミキリは割り箸~指程度の太さ(直径数mm~1cm程度)の枝を好み、時には枝を一周ぐるりと環状に樹皮を食い切ってしまうことがあります。その結果、環状に食害された枝は先端まで養分が行かなくなり、やがてその部分から先が枯死したり、少しの風でポキッと折れてしまったりします。
成虫が活動期に樹上にいるのを目撃した場合や、枝に不自然なかじられ傷(浅く樹皮が削げた跡)を見つけた場合は、産卵されている可能性が高いです。庭で成虫を見かけたり、幹の低い位置に2匹で交尾しているのを発見したら、すぐに捕獲・駆除する必要があります。成虫を見逃すとその場で卵を産み付けられ、幼虫被害につながるため絶対に見逃さないようにしましょう。
幼虫の被害の特徴と見分け方

カミキリムシの幼虫(テッポウムシ)は幹や枝の内部を食い進むため一見わかりにくいですが、いくつか特有のサインがあります。
幼虫が食害を始めると、木くず混じりの糞が幼虫の開けた小さな穴や樹皮の割れ目から排出され、根元におがくずの山ができます。細かい乾いた木の削りかす状で、色は樹種によりますが淡黄色~褐色の繊維質な塊です。このおがくずが株元にあるのを見つけたら、その木に幼虫が侵入している可能性が非常に高いです。
もし発見したら近くの幹や根元を丹念に調べ、直径2~3mmほどの小さな穴(幼虫の侵入孔や排出孔)がないか確認してください。その穴こそ幼虫の居場所を示す目印であり、穴が見つかれば間違いなく内部にテッポウムシが潜んでいます。
幼虫に内部を食害された樹木は、徐々に樹勢が衰えてきます。葉色が悪くなったり、枝先がしおれるように元気がなくなることがあります。被害が進行すると幹や太枝の内部がスカスカに空洞化し、維管束が寸断されて、樹木全体が急激に弱っていきます。
最終的には枝や株そのものが枯れてしまう危険もあるため、幼虫被害のサインを見逃さないことが重要です。なお、幼虫は幹のかなり低い位置(多くは地表から50cm以下)に産み付けられることが多いです。地際近くや浅根の付近までしっかり観察することで、被害の早期発見につながるでしょう。
発生時期(本州) | 被害の特徴 | 発見のポイント | |
---|---|---|---|
成虫 | 5月下旬~8月 | 枝の樹皮をかじる 幹の表面に産卵痕 | 成虫の姿を幹や枝先に直接確認 樹皮に浅いかじり傷 若枝が突然枯れたり折れる |
幼虫 | 6月~翌年4月 | 幹や枝の内部を食害 内部が空洞化 | 根元や幹から木くずが排出 幹や地際に直径2〜3mmの小さな穴 葉のしおれ・黄変、枝の衰弱 |
成虫の駆除、防除対策
成虫のカミキリムシは庭木に飛来して食害しますが、動きはそれほど俊敏ではなく、発見できれば物理的な駆除は比較的簡単です。農薬を使わずに成虫を減らす方法や、樹木に近寄らせないための物理的な対策方法をいくつかご紹介します。
捕殺する
成虫を見つけ次第、手やハサミで捕獲してその場で捕殺するのが最も確実な駆除法です。ゴマダラカミキリなどは動きが比較的鈍く、幹や枝に止まっているところを簡単に捕まえられます。
素手で捕まえるのに抵抗がある場合は、虫取り網で落として踏みつぶすか、剪定バサミで胴体を素早く切断する方法もあります。成虫はつかまれると「キィキィ」などと鳴くことがありますが、怯まず処理しましょう。
特に初夏の成虫発生期には、朝夕の涼しい時間帯や水やりのついでに毎日パトロールし、幹や葉上に成虫がいないかチェックしましょう。交尾中のペアを見つけた場合はその場で2匹とも捕殺することで、産卵数を大幅に減らせます。
地道な捕殺作業ですが、被害の発生を未然に防ぐためには非常に効果的です。
防虫ネットやテープ巻きによる防除
成虫そのものを物理的に寄せ付けないために、防虫ネットを活用するのも有効です。
鉢植えや小さい果樹であれば、目合い1mm程度の防虫ネットで樹全体を覆ったり、根元部分にトンネル状のネットをかぶせたりして成虫の侵入を防ぎます。
特にバラや若い果樹では、初夏だけでもネットで防護することで産卵被害をかなり減らすことができます。地植えの庭木でも、樹幹の根元周囲に幅広の寒冷紗やネットを巻き付けておけば、成虫が幹をかじるのを物理的に阻止できます。
樹皮に粘着テープを巻く方法もあります。幹に粘着性の捕虫テープをぐるりと巻いておくと、成虫が貼り付いて捕獲できることがあります。また防鳥用の銀色テープなど使用すれば、カミキリムシは光るものを嫌う習性があるため忌避効果が期待できます。
物理的なバリアや忌避資材を組み合わせて、成虫が産卵しに来ない環境を作りましょう。
おすすめの防除法:テッポウムシ予防樹脂フィルム
カミキリムシは木の樹皮を食害し産卵するため、樹皮の食害を防ぐことができれば産卵も予防することができます。
防虫ネットや不織布では隙間から侵入される可能性があることに加え、通気性が悪くなり病害や他の害虫が繁殖する可能性もあります。
これらの問題を一気に解決してくれるのが、テッポウムシ予防樹脂フィルムです。
ハケで木の幹や枝に塗布するだけで時間経過とともに固まり、木の周囲をコーティングするようにガードしてくれます。カミキリムシの成虫が食害しにくくすることで、産卵を予防する効果があります。

樹脂フィルムを塗布するために、ハケを用意しておきましょう。

このようにハケで木の幹や太い枝を中心に、まんべんなく塗布していきます。

全体に隙間無く塗布できたらしばらく乾燥させます。丸一日経過すれば、硬くなってコーティングが完成です。液体のままだと白っぽい色ですが、乾燥して硬くなると透明なコーティングに変化します。
実際に使用してみたところ、以前は定期的にあったカミキリムシ被害がここ2年ほど全くなくなりました。非常に効果的な予防方法ですので、カミキリムシ被害に悩んでいる方はぜひ使用してみてください。
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木酢液など臭いによる忌避
カミキリムシ成虫は酢酸や煙臭などの刺激臭を嫌うと言われています。農薬を使わずに忌避効果を狙う方法として、木酢液や酢のような天然由来の防虫資材を散布する方法も効果があります。
木酢液燻煙した木材から採れる液で強い燻製臭が特徴ですが、これを水で希釈して週1回程度、庭木全体や根元周囲に散布すると、成虫被害を予防することができます。
特に成虫の活動期に定期的に木酢液を撒いておけば、強い匂いでカミキリムシを寄せ付けず産卵を防げる可能性があります。ただし匂い成分は時間とともに薄れるため、こまめな再散布がポイントです。雨後には撒き直すなどし、常に樹木から忌避臭を発する状態にしておくと良いでしょう
誘引トラップの設置
成虫をおびき寄せて捕まえる誘引トラップを利用する方法もあります。2リットルのペットボトル上部側面に四方穴を開け、中に砂糖水や果実酢、焼酎などを混ぜた発酵液を入れて木陰に吊るすと、発酵臭に誘われたカミキリムシが侵入することがあります。
捕獲率はそれほど高くないものの、被害が頻発している場合には捕殺による対策と併用して試してみるとよいでしょう。
幼虫(テッポウムシ)の駆除、防除対策
カミキリムシの幼虫(テッポウムシ)が木の内部に侵入してしまった場合、早期発見と駆除が枯死を防ぐポイントになります。
針金や専用器具を使って駆除する
穴に針金を差し込んで幼虫を突き刺す方法です。幼虫の侵入孔を見つけたら、太めの針金(園芸用のアルミ線や伸ばしたハンガーなどで可)を穴に挿入し、木の内部で動いている幼虫めがけて深く差し込みます。手応えがあれば何度か突き刺して幼虫を仕留めます。
幼虫が奥深くに潜んでいると届かないこともある点に注意が必要です。刺殺できたか確信が持てない場合も多いため、念のため数日後に再度同じ穴からおがくずが出てこないか確認しましょう。おがくずの排出が止まれば駆除成功の可能性大です。
テッポウムシ退治用ノズル付きスプレー
テッポウムシ退治用ノズル付きスプレーも市販されています。3方向に噴射できる細長いノズルを幼虫の穴に挿して殺虫剤を注入する製品です。カミキリムシの幼虫専用の製品だけあり、効果は抜群です。
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カミキリムシ被害は初動が遅れると、木が枯れて取り返しの付かない結果になります。薬剤の使用に抵抗がある場合も、以下のような場合は迷わず使用することをお勧めします。
- 複数の排出穴があり、多数の幼虫がいることが疑われるとき
- すでに広い範囲で食害されており、明らかに被害が大きいとき
- 多数の穴がつながりお互いに交通しているとき
- 木が枯れ始めるなど異変が出現しているとき
ノズルを使用して内部の深い部分まで確実に薬剤を噴射できるため、確実に幼虫を駆除することができます。被害が大きい場合には迷わず使用しましょう。
熱湯による駆除
物理的に針金が届かない場合や、より確実に駆除したい場合は熱湯を注いで幼虫を殺す方法もあります。
排出口の穴に熱湯を細く流し込むと、高温で穴の中の幼虫を熱死させることができます。樹皮や形成層へのダメージも考えられるため、大量に注ぎすぎないよう注意します(細いノズルのついたケトル等で少量ずつ注ぐと良いでしょう)。
木へのダメージもあるため、既に大きな幼虫被害が出ている場合や幼木などで耐えられない場合には避けるようにしましょう。
熱湯処理後は再びおがくずが出てこないか確認し、出るようなら再度熱湯を追加します。高温処理は薬剤を使わないで行うことのできる方法ですが、周囲に熱湯が飛び散らないよう安全にも留意してください。
産卵させない環境作り

カミキリムシのメス成虫は、弱った木や傷んだ木に産卵する傾向があるとされています。必ずしも健康な木が安全というわけではありませんが、抵抗力のない木ほど狙われやすいのは事実です。そのため、日頃から庭木の健康管理をしっかり行い、樹勢を強く保つことが予防につながります。
適切な施肥や水やりで木を丈夫に育て、日当たりや風通しを改善してストレスを減らしましょう。樹勢の弱った木には産卵されやすくなるため、場合によっては植え替えや土壌改良で環境を整えることも必要です。
また、剪定時に出る剪定枝や枯れ枝は放置しないことも重要です。地面に放置された丸太や枝にもカミキリムシは産卵しますので、剪定した枝や倒木などは早めに処分してください。放置したままだと、そこで孵化した幼虫が周囲の健全な木に移って被害を広げる恐れがあります。
加えて、庭の清掃と観察も習慣づけましょう。雑草が生い茂っていると落ちたおがくずに気付きにくいため、樹木の根元は常に見渡せるよう除草しておきます。
もしお住まいの近辺でカミキリムシ被害が多発している場合、おとり木(誘引木)を利用する手もあります。成虫の好む樹種の丸太や枝を初夏に庭の片隅に置いてわざと産卵させ、秋~冬にそのおとり木を処分するという方法です。
これは手間がかかるので一般家庭ではあまり行われませんが、小規模果樹園などで被害が甚大な場合には検討されることがあります。いずれにせよ、「予防80%・駆除20%」くらいの気持ちで、まずは成虫を近寄らせない・産卵させない環境づくりに注力することが、幼虫被害の効果的な対策になります。
被害発生後のリカバリー方法(樹木の回復処置)
もし残念ながらカミキリムシの被害が出てしまった場合でも、適切な処置を施すことで樹木が回復したり、被害の拡大を防げる可能性があります。
被害枝・幹の切除
幼虫に深く侵入された枝や幹は、内部が空洞化していたり構造的に脆くなっています。そのような重度被害部位は早めに剪定・除去するのが無難です。
幼虫が幹ではなく太枝に留まっている場合は、その枝ごと付け根から切り落としてしまうことで被害の進行を食い止められます。
また、成虫により枝が環状剥皮されてしまった場合も、その枝は枯死する可能性が高いため、健全部位でカットしておきます。被害枝を切除した後は、切り口からの病虫害侵入を防ぐため殺菌剤入りのトップジンペーストや癒合剤を塗布して保護しておきましょう。
被害が主幹に及ぶ深刻なケースでは、樹勢や安全面を考慮して樹木自体の更新(伐採と植え替え)も視野に入れます。ただし庭の大切な樹木の場合、可能な範囲で下記の回復処置を試みてください。
幹の穴・傷口の処理(癒合促進)
幼虫を駆除した後に残る幹の穴は、そのままでは塞がらず病原菌や他の害虫の侵入口になりかねません。そこで、必ず穴埋め処理を行います。
穴が小さい場合は市販の癒合剤(カルスメイト等、殺菌剤無配合の樹脂ペースト)を充填したり、木工用ボンドで代用して塞ぐこともできます。
大きな穴や樹洞になってしまった場合は、中を清潔な水で洗い流して木屑や糞を除去し、乾燥させてから癒合剤やパテで覆います。こうした処置により、穴からの二次感染を予防し、木の生長とともに穴を塞ぐのを助けます。
成虫に樹皮を齧られて一部剥がれた程度の傷であれば、傷口を清潔にしてからトップジンMペーストなどを塗布し、上から布やテープで保湿保護すると良いでしょう。軽微な樹皮の剥離なら、適切に保護すれば1~2年で傷が癒合し、樹皮が再生することもあります。
土壌改良と適切な施肥・灌水
被害を受けた木は樹勢が落ちています。根の活力を取り戻し新しい組織を再生させるために、土壌環境の改善と養分・水分の補給を行いましょう。
まず、根元周囲の土壌が固く締まっていたらスコップで軽く耕し、腐葉土や堆肥をすき込んで排水・保水性を改善します。
時期に応じて緩効性の肥料(チッ素・リン・カリをバランス良く含むもの)を施し、弱った木に栄養を与えます。特にカリは新しい組織形成を助け、リンは発根を促進するので、果樹用などの肥料を規定量与えると良いでしょう。ただし真夏の施肥はかえって負担になる場合もあるため、時期を選びます。
水やりも欠かさず行い、樹木が新陳代謝を進められるようサポートします。初春の潅水は特に重要で、春先にしっかり水分が行き渡っていると樹勢回復に有利です。
適切な対策を講じてカミキリムシ被害を予防しよう
カミキリムシは一度発生すると厄介な害虫ですが、発生予防と早期発見・早期駆除によって被害を最小限に抑えることが可能です。
特に家庭の果樹や庭木では、初期の段階で発見できれば農薬に頼らない対策を組み合わせて対応することも十分可能です。
日頃から樹木の状態を注意深く観察し、「おかしいな?」と思ったらすぐ対処する習慣が何よりの防除策です。大切な庭の木々を守るため、ぜひ本記事の対策を参考に実践してみてください。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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