「葉が白っぽい斑点だらけに…?」「小さな粉みたいな物がたくさんついている…蜘蛛の糸みたいなものも」「なんだか元気がなくて枯れてきている…」
家庭菜園で育てているナスやキュウリに、こんな症状は出ていませんか?もしかしたらハダニの被害かもしれません。
ハダニは高温・乾燥を好み、梅雨明けから真夏にかけて一気に増殖するやっかいな害虫です。葉の裏にびっしりついて汁を吸い、やがて葉が白く変色、ひどいときには枯れてしまうことも…。
本記事では、ハダニの発生時期や被害の見分け方から、自然由来の対策・駆除方法まで、無農薬でも実践できるハダニ対策のすべてを詳しく解説します。
「こまめな水やりだけで防げる?」「牛乳や重曹スプレーって本当に効くの?」
そんな疑問にもお答えしながら、ハダニと上手につきあっていくための知識と実践法をご紹介します!
ハダニの生態と発生条件

ハダニは植物の葉に寄生する体長0.5mm程度の非常に小さなダニで、葉裏に付着して汁を吸います。高温・乾燥を好み、気温20~30℃の暖かい時期に活動が活発になります。特に25℃以上の乾燥した条件では繁殖力が旺盛で、約10日で卵から成虫になる種もいるため、短期間で大発生しやすい害虫です。
また雌のハダニは交尾せず単為生殖で産卵でき、一匹で50~100個ほど卵を産むため爆発的に増殖します。
乾燥に強い一方、水や湿気に弱く、雨が当たらない場所(軒下やビニールハウス内、ベランダなど)で特によく発生します。種類によっては越冬するものとしないものがあり、越冬型は冬を耐え春に再び活動を始めます。
発生時期とピーク
本州では春から秋にかけてハダニが発生します。
春(4月頃)に 越冬したハダニが新芽とともに活動を再開し、「春ダニ」と呼ばれる初期の発生が見られます。
梅雨(6月頃)になると雨量と湿度が高くなり、ハダニの活動が一時的に抑えられます。雨が葉を洗い流し湿度も高いため、繁殖はあまり活発ではありません。しかし梅雨明け後に備えて注意が必要です。
夏(7~8月)は最も注意が必要となります。梅雨明け直後から夏にかけてがハダニ発生の最盛期です。雨が少なく気温が高い真夏はハダニが爆発的に増殖しやすく、これを「夏ダニ」と呼びます。特に7~8月の高温乾燥下で急増し、この時期はハダニの天敵となる昆虫の活動も減るため、被害がさらに広がりやすくなります。
秋になると気温が下がり始めますが、初秋でも暖かい年は「秋ダニ」として9~10月に発生が目立つ場合があります。ただし気温低下とともに活動は徐々に鈍り、休眠できる種は越冬態勢に入ります。
被害作物の症状と進行例

ハダニ被害の初期症状は葉の表面に現れる白い小さな斑点(かすり状の吸汁痕)です。これはハダニが葉裏から汁を吸い取った跡で、葉緑素が抜けて点状に色抜けするためです。
被害初期は斑点が細かく目立ちにくいですが、ハダニの数が増えて被害が進行すると斑点が多数集まり、葉全体が白っぽくなります。さらに進むと葉は緑色を失って褐色に変色することもあります。
ひどい場合はハダニの出す糸で葉や枝がクモの巣状に覆われ、蕾の開花が阻害されたり、葉が枯死してボロボロ落ちることもあります。
発生しやすい作物は?
ハダニが発生しやすい野菜
作物 | 発生しやすい理由・特徴 |
ナス | 乾燥・高温を好み、葉が広く密生しているためハダニの隠れ場所が多く、最も被害が出やすい。葉が白っぽく変色し、落葉しやすくなる。 |
キュウリ | ハウス・露地ともに被害多い。葉の裏に集まり、汁を吸って斑点状に変色。光合成能力が落ちて株が弱る。 |
トマト | 乾燥が続くと急に発生する。葉が白化して収量に影響。被害初期に気づきにくい。 |
ピーマン/シシトウ | 発見が遅れると葉が白く変色・乾燥して収穫量に大きく影響。葉裏にびっしり付きやすい。 |
イチゴ | 特にプランターやトンネル栽培で被害多い。葉の縁から乾き、果実も小さくなる。 |
エダマメ(ダイズ) | 夏の乾燥期に注意。葉が縮れたり、生育が鈍る。豆の入りも悪くなる。 |
特にナスは家庭菜園でハダニ被害を受けやすい代表的作物です。ナスは高温を好む作物のため夏場にハダニが付きやすく、被害が広がると収量が極端に減少するほどダメージが大きくなります。枯れた葉を放置するとハダニは次々と健康な新葉へ移動して被害が拡大するため、早めの対策が必要です。
その他、キュウリやピーマン、イチゴなどもハダニが好む作物で、同様に生育不良や収量低下を招きます。果樹ではリンゴや梨、柑橘類に被害が出ることがあり、果実の品質低下や収穫量減少をもたらします。家庭菜園でも油断すると鉢植えや小型の果樹が丸ごと枯死する恐れがあるため注意が必要です。
早期発見のコツ
ハダニは非常に小さく、一見すると葉の汚れやホコリにも見えるサイズです。しかし早期発見が被害拡大を防ぐ鍵となるため、日頃から注意深く観察しましょう。
葉裏のチェック
ハダニは葉の裏側に集まる習性があるため、野菜や草花の葉裏を定期的に観察します。白い斑点など被害の兆候を見つけたら、葉裏に小さな動く虫がいないか確認してください。
斑点が出る病気と紛らわしいこともありますが、葉裏に小さなダニが動いていればハダニ被害と判断できます。虫眼鏡を使うと確認しやすいです。
被害の初期徴候を見逃さない
葉の色艶が悪くなったり、ごく細かな斑点やかすれが見え始めたら要注意です。肉眼ではダニ本体が見えなくても、葉がなんとなくくすんだり銀白色っぽく見える場合は初期被害の可能性があります。
特にナス科やウリ科の葉は濃緑色なので、白い小斑点が見えやすく比較的気付きやすいです。
葉を擦る・振るテスト
葉裏を指で軽く撫でてみて、赤茶色や黄白色の粉のようなものが付いたら、それが潰れたハダニの死骸というケースもあります。
また、白い紙の上で葉を軽く叩き落とすとハダニが落ちて動くのが見える場合もあります。非常に小さいので動く埃のように見えます。
初期段階で発見できれば、被害が広がる前に対処が可能です。最低でも週に1回は葉裏を点検し、特に梅雨明け後~夏場にかけては頻繁にチェックする習慣をつけましょう。
無農薬、自然由来のハダニの予防・駆除方法
ハダニは発生後に駆除するのが難しい害虫ですが、無農薬でも工夫次第で予防・軽減が可能です。実践しやすい対策を紹介します。
重曹、植物油スプレー
重曹を使った手作りスプレーもハダニ駆除に有効です。水200mlに対し重曹小さじ1を溶かし、さらに植物油を約60ml程度加えてよく混ぜます。この乳化液をスプレーボトルで葉裏に散布すると、1回の噴霧でハダニを効果的に駆除することができます。
油分がハダニをコーティングし窒息させる効果と、重曹の弱アルカリ性による虫体への影響で駆除する仕組みです。ただし散布後は早めに水で洗い流すなどして薬液が葉に残らないようにしましょう。
天敵、益虫の活用
ハダニには天敵となる生物が数多く存在し、うまく利用することで被害を抑えられます。代表的な天敵はテントウムシ類、ヒメハナカメムシ、カブリダニ、クサカゲロウ、ハダニアザミウマ等です。
これらはハダニを捕食して発生密度を抑えてくれます。家庭菜園では薬剤を乱用しないことで天敵を殺さないようにし、さらに後述のコンパニオンプランツなどで天敵を呼び込むと効果的です。
水を使った物理的防除
水はハダニの弱点です。葉裏へのこまめな散水により効果的な駆除・予防を行うことができます。特に葉裏に念入りに毎日1~2回散水するすると、付着した成虫・幼虫を洗い流し、産み付けられた卵の孵化も抑えられます。
ハダニが密集している箇所は、ノズルをジェット噴射に切り替えて狙い撃ちし、物理的に吹き飛ばしましょう。ただし、葉を傷めないよう適度な強さで行うよう注意してください。
鉢植えであれば、鉢ごと水に浸けるのも有効です。バケツなどに株全体を5~20分沈め、浮いてきたハダニや卵を取り除きます。水中で葉を優しく揺すって洗えば、かなりの数を除去できます。風通しの良い日陰で乾かせば根腐れの心配もありません。
酢・木酢液スプレー
酢はハダニ卵の殺虫に効果があるとされ、家庭菜園で利用されているものの一つです。酢を水で約10倍に薄めた溶液をスプレーし、葉裏の卵に吹きかけます。酢は成虫にも効くといわれるため、卵だけでなく成虫にも定期的に散布すると予防効果が期待できます。
市販の竹酢液・木酢液も同様に10~50倍程度に希釈して散布すると、忌避効果や植物の抗菌力を高める効果が期待できます。酢や木酢液を使う際は濃度が高すぎると葉焼けの恐れがあるため、薄めに作り夕方以降に散布するのが安全です。
牛乳スプレー
手軽な民間療法として牛乳もよく知られています。水と牛乳を1:1に混ぜたスプレー液を葉裏に噴霧し、乾かすことでハダニの呼吸孔を塞いで窒息させます。散布は晴れた日の朝に行うと乾きやすく効果的です。
翌日には葉に残った牛乳成分を水でよく洗い流してください。放置すると臭いや腐敗、カビの原因となります。牛乳スプレーは即効性がありますが、害虫の再発を完全に防ぐものではないので、必要に応じて数日おきに繰り返しましょう。
ニームオイル
ニームオイルも有機栽培で広く使われる害虫忌避資材です。ハダニやアブラムシなどの食欲を減退させ、繁殖や成長を阻害する効果があります。
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また幼虫の孵化を抑制する作用も報告されており、総合的な害虫抑制に効果があります。市販のニームオイル製剤を用法に従って水で希釈し、葉面散布するのが一般的です。週1回の定期散布で害虫の定着を防ぎます。
ハダニにも一定の効果が期待できますが、即効で全滅させるというよりは発生や増殖を抑えるのが主な効果と考え、大量発生している場合には他の対策と組み合わせましょう。
コンパニオンプランツの活用
コンパニオンプランツとは、特定の作物と一緒に植えることでお互いの成長を助けたり害虫を防ぐ植物のことです。
ハダニ対策としては、マリーゴールドやナスタチウムなどが有効な例として挙げられます。例えば畝間にマリーゴールドを混植すると、花に訪花昆虫やハダニの天敵が集まりやすくなり、結果的にハダニの発生が少なくなる効果が期待できます。
マリーゴールドは根から分泌する成分で線虫を防ぐ効果が有名ですが、同時に花が生物多様性を高めて益虫を呼ぶことで間接的に害虫防除に寄与します。ナスタチウムも同様に花が咲き続けて天敵を呼び込むほか、自身がアブラムシなどを引き受けるトラッププランツの役割も果たします。
こうした植物を野菜と組み合わせて植えることで、ハダニが大発生しにくい環境づくりが期待できます。ただしマリーゴールド自体がハダニに食害されることもあるため、状況に応じて剪定や駆除を行いましょう。
環境管理と予防策
何より大切なのはハダニが好まない環境を整えることです。
ハダニは地表の乾燥・高温状態で増えやすいため、夏場は畝や株元にワラや落ち葉などでマルチングし土壌の乾燥と過度な地温上昇を防ぎます。春先に黒マルチを使っている場合は、梅雨明け後は外すか有機マルチに切り替えると良いでしょう。
雑草の管理も重要です。ハダニは雑草で越冬し春先に作物へ移ることがあるため、4月頃から定期的に圃場周辺の雑草を除去し、発生源を断つようにします。
苗を購入・定植する際にも、苗にハダニが付着していないか葉裏をよく確認し、持ち込まない工夫をしてください。一部の葉にのみハダニがいる初期段階なら、被害葉の切除処分も有効です。ハダニに覆われた葉や枝は思い切って切り落とし、ビニール袋に入れて密封処分しましょう。
ハダニ対策は早期発見と複合的な対処が肝心です。特に夏場は放置するとあっという間に大発生して手に負えなくなるため、日頃から葉の様子を観察し、環境を整え、予防と駆除を根気よく続けることが大切です。
無農薬でも紹介した方法を組み合わせれば十分対抗できますので、ぜひ実践してみてください。こまめなチェックとシンプルな水やり対策から始めて、被害ゼロの元気な家庭菜園を目指しましょう。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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