オクラを家庭菜園で育てるとき、根に「こぶ」ができたことがありませんか?その原因のひとつが「ネコブセンチュウ」と呼ばれる小さな害虫。この害虫は植物の根に寄生して成長を妨げ、放置すると収穫量に大きな影響を与えます。この記事では、ネコブセンチュウの正体から、発生時の対策方法、そして予防策について詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
オクラの根のこぶはネコブセンチュウが原因
ネコブセンチュウとは
ネコブセンチュウ(Meloidogyne spp.)は、植物の根に寄生する線虫の一種で、世界中の畑や家庭菜園に存在します。この線虫は非常に小さく、長さが0.5~2mm程度で、肉眼での確認は非常に難しいです。植物の根に侵入し、内部に産卵することで根にこぶを形成します。このこぶは、植物が栄養を吸収する能力を低下させ、結果的に生育不良や収穫量の減少を引き起こします。
ネコブセンチュウが発生するとオクラの成長が鈍くなり、地上部の葉がしおれたり、枯れたりすることもあります。収穫量も低下することが多いです。また、根を掘り起こしてみると、大小のこぶがたくさん見つかります。このこぶの中にネコブセンチュウが卵を産みつけているため、放置すると次世代のセンチュウが増殖し、被害が拡大していきます。
ネコブセンチュウ被害の原因
ネコブセンチュウが発生する主な原因は以下の通りです。
高温多湿の環境
ネコブセンチュウは温暖で湿度の高い環境を好みます。特に日本の夏季や梅雨の時期は、土壌が温まりやすく、センチュウの活動が活発になります。このため、夏野菜の栽培シーズンに被害が拡大しやすい傾向にあります。
連作障害
同じ種類の作物を同じ場所に連続して栽培すると、土壌中に特定の害虫や病原菌が増殖して蓄積しやすくなります。ネコブセンチュウも例外ではなく、オクラやナス科の野菜を毎年同じ場所で育てると、センチュウが増殖しやすくなります。
土壌管理の不備
土壌の水はけが悪く、過湿状態が続くとネコブセンチュウが繁殖しやすいです。また、土壌中の有機物が不足していると、自然の微生物バランスが崩れ、センチュウの増殖の原因になることもあります。
どんな作物が被害に遭いやすい?
ネコブセンチュウの被害を受けやすい作物には、オクラだけでなく、ナス、トマト、ピーマンといったナス科野菜、キュウリやスイカなどのウリ科野菜が挙げられます。特にナス科の植物は、ネコブセンチュウに対して感受性が高く、根にこぶができやすいです。また、根菜類のダイコンやニンジンも被害を受けることがあり、収穫時に異常な形状の根が見られることもあります。
一方、玉ネギやニラ、ソラマメなどの野菜は、比較的ネコブセンチュウに強いとされています。被害を受けた畑ではこれらの野菜を植えることでセンチュウの数を減らし、土壌をリセットすることが可能です。
根こぶ病との違いは?
ネコブ病 | ネコブセンチュウ | |
---|---|---|
原因 | 糸状菌(カビの一種) | センチュウ |
こぶの形状 | 比較的滑らかで、表面が均一 | 不規則でぼこぼことした形状 |
主に発生する作物 | アブラナ科の野菜(キャベツ、白菜など) | ナス科(トマト、ナスなど)、ウリ科(キュウリ、スイカなど)や他の様々な野菜 |
ネコブセンチュウによる「こぶ」と、細菌や真菌による「ネコブ病」は異なります。ネコブセンチュウの場合は、こぶの内部に線虫が存在し、不規則な形状のこぶが多くできます。
これに対し、ネコブ病では植物の根に寄生するカビ(糸状菌)の一種が原因となり、アブラナ科の野菜に発生します。こぶは比較的滑らかで、表面が均一な形をしています。
どちらも植物の根にこぶを形成しますが、原因は全くの別物です。しかしいずれの場合も、早めに対策を講じることが重要です。
ネコブセンチュウが発生!対策は?後作はどうする?
ネコブセンチュウ被害が発生した場合、被害にあった植物の根をしっかりと除去することが大切です。根のこぶにはセンチュウの卵が多数存在しているため、しっかりと除去しましょう。残渣は畑にすき込んだりせず、処分するのがベターです。
ネコブセンチュウの被害が確認された畑では、後作に何を植えるかが重要です。ネコブセンチュウに耐性のない植物を植えてしまうと、植物が上手く育たないばかりかセンチュウがさらに増殖して被害が拡大してしまいます。ネコブセンチュウに強い作物を選ぶことで、被害を最小限に抑えましょう。
例えば、玉ネギやニラなどのヒガンバナ科の野菜や、ソラマメなどはセンチュウが発生した後にも栽培可能と言われています。
逆に後作に不適切な野菜としては、ニンジン、大根などの根菜類や、オクラと同じアオイ科のモロヘイヤなどがあります。これらはセンチュウ被害に遭いやすく、土壌のセンチュウがさらに増える原因にもなるため、センチュウ被害のあった場所では避けた方が良いでしょう。
また、被害を受けた土壌には「休耕」を取り入れるのも効果的です。1シーズン畑を休ませることで、センチュウの密度を低下させることができます。この際に、下で紹介するセンチュウ対策を実施して土壌の健康状態を回復させ、次の栽培に備えることができます。
何も対策を行わない場合、ネコブセンチュウの被害は10年近くも残ると言われています。被害を拡大させないためにも、しっかりと対策を行いましょう。
ネコブセンチュウ被害の対策は?
太陽熱消毒
太陽熱消毒は、ネコブセンチュウ対策として非常に効果的な方法の一つです。太陽熱消毒を行いたい場所に十分に散水し、全体を透明なビニールで覆います。2〜4週間ほど覆い続けることで夏の強い日差しを利用し土壌の温度を上げ蒸し焼き状態にすることで、センチュウやその他の病原菌を死滅させます。
この方法は環境負荷が少なく、自然の力を利用した土壌消毒方法です。時間はかかりますが熱による消毒効果で確実にセンチュウの数を減らすことができるため、非常に有効です。ただし、広い範囲を処理するのは手間がかかるため、小規模な家庭菜園での利用が向いています。
石灰散布
石灰を土壌に撒くことで、石灰窒素に含まれる「シアナミド」が殺センチュウ効果を発揮してセンチュウの密度を下げることができます。また、pHが酸性寄りの土壌ではセンチュウが増えやすいため、アルカリ性に傾けることで増殖を防ぐ効果も期待できます。
石灰を撒きすぎると土壌のバランスが崩れるため、適量を守ることが重要です。また、石灰散布直後に苗を植えるつけると生育に影響することがあるため、植え付け時期を逆算して事前に散布時期を決めておきましょう。
米ぬか散布
米ぬかは土壌中の微生物の活動を活発にすることで、農作物に害を与えないセンチュウ類を増やす効果があります。さらにセンチュウの老廃物にはアンモニアが多く含まれており、ネコブセンチュウはアンモニアを苦手とするため、米ぬかを散布することでネコブセンチュウの増殖を抑えることができます。
米ぬかは比較的手に入りやすく、また環境にも優しいため、多くの家庭菜園で利用されています。ただし、散布後はしっかりと土に混ぜ込み、適量を守って肥料過多状態にならないように注意する必要があります。
マリーゴールドを植える
マリーゴールドの根には、ネコブセンチュウを抑制する成分が含まれており、センチュウが土壌中で活動するのを防ぎます。オクラの周囲にマリーゴールドを植えると、オクラの根にセンチュウが寄生するのを防ぐバリアとして働きます。この方法は化学薬品を使わないため、自然に優しい手段としても人気があります。
また、ネコブセンチュウが発生した土壌にマリーゴールドを植えておくことで、センチュウの忌避効果も期待できます。他の対策方法と組み合わせることで高い効果を発揮しますので、試してみてください。
冬場の天地返し
冬場に「天地返し」を行うのは、ネコブセンチュウ対策として効果的な方法です。具体的には、畑の土を深く掘り返して、表層の土を下に、下層の土を上に移動させます。これにより、冬の寒さにさらされたセンチュウを死滅させることができます。寒さに弱いセンチュウは、地表近くに露出することで死滅するため、数を減らすことができます。
天地返しは土壌の通気性を改善し、来年の栽培に向けた準備にもなるというメリットがありますが、作業にはかなり労力がかかるため、家庭菜園など小規模な区画での実施が現実的です。
緑肥を植える
緑肥として知られる作物を植えることで、ネコブセンチュウの数を抑えることができます。緑肥の中にはセンチュウを抑制する効果を持つ作物や、寄生されてもセンチュウが成長できない作物など様々な種類のものが含まれます。
さらに、栽培後に畑に鋤き込むことで土壌中の有機物が増え、微生物の活動を促進します。これによりさらにセンチュウの数を減少させることが期待できます。また、土壌の肥沃度も高めるため、翌年の作物の育成にもプラスの影響を与えます。
センチュウの種類によって有効な植物は異なるため、タキイ種苗の農作物におけるセンチュウ被害と緑肥による抑制効果を参考にしてみてください。
農薬
ネコブセンチュウ対策として、市販の農薬も利用することができます。ネコブセンチュウ専用の駆除剤や、広範囲の線虫に効果を発揮する農薬が販売されています。これらを使用する際には、製品ラベルに記載されている使用方法を厳守し、環境への影響や周囲の作物への影響を考慮する必要があります。
また、農薬を使用した場合、収穫への影響があるものもあるため、使用方法をしっかりと確認し計画的に使用することが大切です。家庭菜園で使用する機会は少ないですが、被害が大きく他の方法では対応が難しい場合には検討しましょう。
まとめ
ネコブセンチュウはオクラの栽培に大きな影響を与える害虫ですが、適切な対策を講じれば被害を抑えることができます。以下のポイントを押さえておくと、効果的に対応できるでしょう。
- ネコブセンチュウの正体: 小さな線虫で、植物の根に寄生してこぶを作る。
- 発生の原因: 高温多湿の環境や連作障害が発生リスクを高める。
- 対策のポイント:
- 太陽熱消毒や天地返しで土壌をリセット。
- 米ぬか、緑肥やマリーゴールドを活用してセンチュウの数を減らす。
- 必要に応じて農薬を使用し、迅速に対応。
これらの対策を組み合わせることで、ネコブセンチュウによる被害を最小限に抑えることができます。ぜひ参考にしてみてください。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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